異文化対応力を培う三つの心がけ
自分とは異なる文化的背景を持つ相手と、気持ちの良い関係を築く能力のことを、異文化対応力という。異文化研修を実施すると、国籍に関わらず、多くの方々がこの能力を培いたい、と願われていることを実感する。そこで本稿では、異文化対応力の涵養に必要な心がけを、私の経験に即し、三つご紹介したい。
一、五感を使って相手の文化を体験する。食事、音楽、スポーツ、イベント・・何でもいい。ふと興味が湧いたことに、思い切って飛び込むのだ。こうした体験から得られた肌感覚というのは、相手の文化的背景を理解する際に、非常に役立つ。もし、何か好きになったことが出てくれば、すぐ相手に伝えるとよい。きっと喜んでくれ、心の距離はぐっと縮まるだろう。
二、相手の行動を変えようとするのではなく、自分の行動を変える。例えば、より直接的なコミュニケーションを好む相手に対しては、察してくれるだろうと期待するのではなく、はっきり言葉にして伝える工夫をする。意識的に、自分の行動を調節するのだ。このような配慮は相手にも伝わり、相手からの配慮を引き出す。逆に相手が自分に合わせてくれることを期待するというのは、自分の文化を押し付けることになり、うまくいかないことが多い。
三、同じ人間としての共通点を見つける。相手を知ろうとする意志が必要だが、見つかった時の嬉しさは大きく、且つその嬉しさは相手と共有できる。私には以前、苦手なアメリカ人上司がいたが、彼の靴下の絵柄が自分の好みと似ていたので、それをネタに二人で笑いあったことがある。些細なことだが、何かが繋がったような気がした。そして喜怒哀楽という感情が、文化の違いを超えた何よりの共通点であることにも、改めて気づかされた。
自分とは異なる文化的背景を持つ相手と、同じ人間として分かりあえた、と感じる瞬間は、誰にとっても嬉しいものである。と同時に、分かりあえない部分があることも良しとする。同じところもあれば、違うところもある、それでいいではないかと。異文化対応力とは、様々な文化がお互い違ったままで共存するための知恵だ。その涵養のための心がけ三つ、何か腑に落ちる所があれば、試していただけると幸いである。
